何年か前に、発表ライブに来ていた先生の友人ミュージシャンから、アドバイスを受けたことがあります。
「お客さん一人ひとりのほうを見ないとね」
先日、取材先で余談的に伺ったのですが、歌手の人はステージ上から観客のほうを見るふりをして実は見ていない、と。少しばかり後ろのほうを見ていたりするのだそうです。
クラシックの人が言っていたので、それはクラシックの歌手の方の話、なのでしょう。
僕も、ライブでの自分の演奏で試してみたことがあります。弾き語りながら、聴いている人を見ると、目が合ってしまい、とたんに恥ずかしくなったり、目をそらしてしまったり。自分が見ている側でも、同じだと思います。恥ずかしい。恥ずかしいし、歌が特定の人へのメッセージにもなりかねない。
そういえば、古い話ですが、むかし『アリー・マイ・ラブ』で、「スティングがステージ上から私のほうを見た(誘惑した)」と言って、裁判沙汰になってた回がありました。
まぁ、法律事務所が舞台のドラマなので、裁判にならないと話が進まないのですが(笑)。
その回のラストのシーンがありました。アリーのいる法律事務所の下にある店になんとスティング登場! 『見つめていたい』を歌ってます。
ともかく。
自分の場合、ちょっと視線をずらして、会場の後ろの、バーカウンターのあたりを見ると、何かちょうどいいのかも、と思いました。少ない経験の中で……。
まぁ、拍手をくれたり、いい反応をしてくれる方もいるので、そちらはちゃんと見たりとか、そこのあたりはケースバイケースで、場を重ねて対処の仕方を学んでいくしかないのでしょう。
この、「One To One」という試み、この秘密の部屋に連れてこられたお客さんの反応を見てる感じですが、試されてるのは、実は演奏するほうなのかも、なんて思ったりもします。
こういうことを考えると、人前で演奏するというのは、とても深い。だけど、そういうことについて考えるのは、幸せなことだなぁ、とも思うのです。