僕がギターを始めたのは、
いまからおよそ5 年前、2012 年の秋の終わり頃。
音楽関係の編集やライティングの仕事が多い僕は
やはり自分も音楽ができる、というか、知識がないといけないなぁ、と
考えていました。
ただなんとなく、なんだけど。
あと、こんなことも。
当時は、なんと海外取材の仕事もあって、
年に3 回くらい、ヨーロッパの国々を訪れる機会がありました。
すると、街で物乞いに出会うことが多いのです。
こんな感じで……。
頭を垂れて、紙コップを差し出して座っているのです。
たまにコインを入れてくれる人もいますが、
ほとんどの人は無視して通り過ぎていく。
ヨーロッパには施しというか、
貧しい人を助ける文化もあるのだと思いますが、
僕がもし物を乞わないといけない立場になったら、
「何かもらったら返さないと」と思うだろうなぁ、と考えました。
本当に浅はかな考えではありますが、
「例えばギターが弾けたら、音楽でお返しができる」と。
まぁ、こんな感じで……。
そんな、単なる思いつきみたいな考えもありましたし、
前年にあった東日本大震災の影響で、
自分のやりたいことはどんどんやらないと、
みたいな刹那的な想いもありました。
そんな折に、僕が当時5 年ほど
雑誌でエッセイを書いてもらっていたブルースマンの彼が、
ギター教室を開いて自分の持っているものを伝えていきたい、と。
とのことでした。
単身ニューヨークに渡り、南部出身の黒人のおじいさんに
ブルースの手ほどきを受けた彼は
最初出会った十数年前はかなり尖っていて、
人にギターを教えるなんて思いもよらなかったけれど、
でも教えるというなら、いっそのこと僕も生徒になろう、
それがいちばんの近道だ、と思い、
その場の勢いで「えいやっ」とギターの道に飛び込んだのでした。
(つづく)